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ヒロくんは、私のすべてだった。
あの時、私の世界は彼一色に染まっていて、私には、彼しか見えなかった。
ヒロくんといると、毎日、何かが起きた。
うれしいことも、かなしいことも、くやしいことも、さみしいことも。とにかく、感情を揺らすたくさんの出来事が連なった。私はそのたびに喜んだり悲しんだり、怒ったり泣いたりしていた。ヒロくんのことが大好きなのに、私には気が休まる暇がなくて、しみじみ大好き、と呟くことも、できなかった。
ヒロくんは、加季さん、ゆっくりしていきなよ、と、いつも言ってくれた。急いだって、ゆっくりやったって、結果は同じなんだよ。私よりみっつ年下のくせに、彼は時々、妙にえらそうなことを口走った。
二十二歳のあの頃。学生寮の二〇九号室だけが、私の世界だった。
そして大学四年生だった私は、この世界からもうすぐ出ていかなくてはならないことも、知っていた。だけどヒロくんと一緒にもう少し、夢を見ていたかった。
ヒロくんが作り上げた世界の、私は住人だった。彼は神で、私はしもべ、ううん、彼の信者みたいなものだった。彼はたくさんのドラマを仕掛けてきた。私達は、うわあ、と毎日のように、目をぱちぱちさせて、いろいろなことに驚いていた気がする。
つづきは、こちらから
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若手作家が村上さんの作品を「トリビュート!」するシリーズができました。
そしてこのたび、私にもチャンスを与えていただけたことを感謝しています。
「ノルウェイの森」は、恋愛小説です。
だから私も恋愛小説を書きました。
読者のみなさまに「ほんとに好きだった人」を思い出していただければうれしいです。
メディアファクトリーのページはこちら
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学生寮に住むヒロくんには、とあるウワサがあった。
恋人が自殺してしまった、というのだ。
昔、失恋した時に不眠症になった経験を持つ「私」は、
ヒロくんといつか話をしてみたいなあと、考えていた。
ヒロくんの秘密と「私」のさみしさが絡み合っていく。
そしてバブル景気が終わったばかりのむなしい日本の大学生活……。
「私」はいつのまにかヒロくんのことばかり想っていた。
村上春樹さんの「ノルウェイの森」はこちら
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1971年山梨県うまれ。
1993年、女子大生時代、恋人にフラれた腹いせに書いた小説がいきなり連載になってデビュー。
所属団体:日本推理作家協会/日本文芸家クラブ/日本冒険作家クラブ/東京ライターズバンク/東京スピーカーズバンク/フリーで働くマスコミママの会
代表作「別れても、バカな人」(幻冬舎)「あなたを買った夜」(KKベストセラーズ)「やっぱ男は顔でしょう」(光文社)「激安!ホスト天国」(河出書房)など。
内藤みか公式HPはこちら
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