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<ラブリンク>
内藤みか
第2話
浩介の手際は見事だ
った。急に言われてき
たにも関わらず、調理
台にある材料を見て、
スタミナ肉野菜炒めと、
具だくさん春雨スープ
をサッサと作ったのに
は、驚いた。
他の男性スポーツ選
手数人にも手料理を作
ってもらったのだが、
皆、もっともたついて
いて、私がしばしば手
を貸さなくてはならな
かったのに。
カメラマンもフライ
パンを器用に動かして
強火で炒めている浩介
に 、
「ひとり暮らししてる
の?」
と話しかけている。
「いや、父と母と兄の
四人家族ですよ。でも
母親が仕事で忙しかっ
たので、料理は子供の
頃から作らされてたん
ですよね」
浩介はフライパンか
ら目を離さずに答えた。
料理とは縁がなさそう
な、肉厚の背中を、私
はぼんやりと見つめた。
彼は視線に気づかず、
楽しそうに手を動かし
ている。
その長いまつ毛。彫
りの深い顔。
細めると、とても優
しくなる瞳。
若い女の子が、追い
回したくなるのもわか
る。間近で見ると、彼
の温かみのある人柄も
重なって、なおさら魅
力的に感じられた。
だけど、私は、この
人に近い顔立ちを、前
から知っていた。
失敗した時、ちょっ
とはにかむように唇を
とがらせ、スネてみせ
るところ。
目と目が合った時に、
照れたように微笑をつ
くりながら、目を伏せ
るところ。
写真だけではそんな
に似ているとは思って
いなかったのだけど、
目の前で見ると、表情
の作り方が同じなので、
それなりに似ている。
(お兄さんのこと、
私、知ってるのよ)
フラッシュを浴びな
がら、出来上がった料
理の皿をカメラに差し
出して笑っている浩介
に、私は心の中で語り
かけていた。
多分、私は浩介より
も、彼の兄の現在を、
知っている。彼のスケ
ジュールさえも。
「なんか、照れますね」
彼は眩しそうな笑顔
になった。それは、フ
ラッシュの光のせいだ
けではなさそうだった。
「取材なんて、久しぶ
りだから」
最近活躍らしい活躍
をしていない彼は、メ
ディアに顔を出すこと
も少なくなっているの
だろう。
遠慮がちな顔をして
いるけれど、でも、嬉
しそうでもある。白い
歯を見せる笑顔でまた、
亮太のことを思い出し
た。
亮太とは明日、会う
約束をしていた。新宿
で待ち合わせてカラオ
ケに行こう、と言って
いた。
(ねえ、私、あなたの
お兄さんが、本当はど
こで何をしているのか、
知ってるのよ)
ぽろっとそう漏らし
さえすれば、きっと浩
介の表情は一変するこ
とだろう。でも、言え
るわけがなかった。
だって、亮太は家族
には「宅急便の夜間仕
分けのバイトをしてい
る」と言っているのだ
から。
浩介は、自分の兄が
出張ホストなのだと知
ったら、どう思うのだ
ろう。残酷な想像に、
私の胸がざわめいた。
私はこのJリーガー
の秘密を、知っている
のだ。
(第3話に続く)
※次は1/4に更新し
ます。
「ラブリンク」は新潮
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