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<ラブリンク>

     内藤みか

 
第3話



 撮影は、無事に終了
した。 
「こんなんで、よかっ
たでしょうか」 
 おずおずとそう尋ね
てくる浩介に、 
「いやあいい絵が撮れ
たよ」 
 とカメラマンが機嫌
よく答え、彼もほっと
したように笑みを浮か
べた。 
 意外だった。 
 試合ではいつも、攻
撃的な彼なのに、素顔
の浩介は、ギラギラし
たところなど一切なく、
ゆったりと優しい感じ
の男の子だったから。
「おいくつでしたっけ」
「僕ですか、二十三に
なりました」 
 一仕事終えて、先程
よりもさらに顔つきが
優しい。ただの渋谷や
新宿によくいそうな若
い男のように見えた。
「夜遅くまでありがと
うございました」 
 私は時計をちらっと
見た。もう午後十時を
回っている。タクシー
券を差し出そうとする
と、 
「大丈夫です、車で来
てますから」 
 と浩介は辞退した。
 もうお帰りいただい
ていいですよと言った
のだけれど、浩介は、
カメラマンが荷物を運
ぶのを手伝い、私がキ
ッチンで洗った皿を、
棚に戻したりと手伝っ
てくれた。
 いい人だ、と感じた。
ぎこちなさが、かえっ
て人柄の良さを感じさ
せるタイプだなと思っ
た。 
(お兄さんとは、大違
いね) 
 兄の亮太もきっとさ
もいい人そうにこの場
にいたら片づけを手伝
うことだろう。 
 けれども、それはお
客様サービス。客に尽
くすのが、彼の仕事だ
からだ。 
 その時ちょうど、携
帯が鳴った。 
 亮太からだった。私
は慌てて廊下へ飛び出
した。浩介の前では出
られない。 
「……窓香ちゃん、明
日何時にどこにする?
」 
 明るくさっぱりとし
た声が耳に伝わってく
る。 
「六時でいい? 新宿
のアルタのいつものこ
と」 
「了解ぃ〜! 早く会
いたいから、今日は早
く寝るね!」 
「何わけのわかんない
こと言ってんの?」 
「でも何となく早く寝
たら早く窓香ちゃんに
会えそうじゃん」 
 亮太は、いつも明る
い。本当に私のことを
好きで、明日のデート
を心待ちにしているか
のような声を出す。 
 でも楽しくデートを
盛り上げるのが彼の役
目なのだから。本当の
ところは何を考えてい
るのか、わからない。
 今、あなたの弟と一
緒にいるのよと言える
わけもない。私は電話
をすぐに切った。
 
「……彼氏ですか?」
 
 びくッとして、振り
返った。浩介がそこに
いた。 
「すいません、なんか、
楽しそうだったから」
(彼氏じゃないわよ。
出張ホスト。しかも、
あなたのお兄さん) 
 私は彼をじっと見返
した。 
 ほんとのことを言っ
たら、どうなってしま
うのだろう。 
 浩介も黒目がちな瞳
を見開いている。 
「ひみつ」 
 私はそれだけ言った。
「ひみつ、ですか」 
 彼は急に、じろじろ
と私の全身を見つめて
きた。
 まるで、珍しい生物
でも見つけたかのよう
に。 


(第4話に続く)

「ラブリンク」は新潮

社より1月30日に出

版予定です。

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