育児と家事とエロ、
全部引き受けます。
「奥様は官能小説家」
幻冬舎文庫・630円
著者・内藤みか
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重版決定いたしました!!!
24歳でできちゃった結婚をしてしまった官能作家の、
エロと涙とDVと嫁姑戦争と公園デビューと育児ノイローゼな!
壮絶でも笑えてちょっとエッチな……エッセイというか、奮闘記!?
ママになったあなたも。
いつかはママになるあなたも。
そしてパパなあなたも。
いいつかはパパになりたいあなたにも。
ぜひ……読んでいただきたい1冊です。
内藤みか
【目次】
プロローグ
〜付・内藤みかの主婦年表〜
第一章
【主婦になった官能作家】
<私が官能作家になったワケ>
<赤い糸はネットの中に>
<堕胎前夜>
<官能作家であることは、ナ・イ・シ・ョ!>
第二章
【母になった官能作家】
<ゲロすらも小説に>
<官能小説家の出産シーン>
<そして体重、五キロ増>
<育児マニュアルにハマる>
<こだわりすぎの自然育児>
第三章
【育児ノイローゼになった官能作家】
<マタニティブルーがきた〜ッ!>
<オットに殴られ、イタい日々>
<虐待する母親にだって、理由がある>
<カウンセリング巡り>
第四章
【ボスになった官能作家】
<主婦が、コワイ!>
<私の公園デビューは罵声と共に始まった>
<公園を捨てたけど……>
<社宅ボスに無視されて>
<嗚呼、全自動……の巻>
<主婦友達大増殖>
<「デキちゃった」のか「計画出産」なのか>
<そしてお世辞クィーンに>
第五章
【ワーキングママになった官能作家】
<出産してこんなに変わった私の24時間>
<官能小説家、というオシゴト>
<産休明け。仕事ゼロ。>
<保育園デビュー>
<私は、在宅“エロ”ワーカー>
第六章
【官能作家が見たスゴい人妻達】
<離婚上手・離婚下手>
<ネット不倫依存症>
<ホスト遊びは人妻のたしなみ>
<テレクラという慰め>
<官能作家を目指す奥さん達の群れ>
<間接的に子どもを殺す母親達>
特別付録・内藤みかが出会ったトンデモ奥様図鑑
エピローグ
文庫版あとがき
解説・夏石鈴子さん「よくがんばりました」
<本のサワリをチラリとご紹介します☆>
<ゲロすらも小説に>
私は三回妊娠したことがある。 二回は息子と娘の時。そしても
う一回は流産した時。
そしてどの妊娠の時も、ものすごいつわりで倒れ、十キロ以上痩
せて長期入院した。
どうもつわりがひどい体質らしい……。何も食べられず、飲めず、
何か無理矢理口にしても全部リバースしてしまう私は、医者に全て
の飲食を禁じられた。なぜならば、
「おつり(ゲロについてくる胃液)があるので、吐くとますます痩
せてしまうから」
だという。一日六本もの栄養点滴をしながら、生きながらえるし
かなかったのだが、それでも三十分おきにゲロゲロと胃液を吐き、
どんどん痩せた。
三回目の妊娠の時なんて、体重が十六キロも落ちた。四十九キロ
あったのが、三十三キロにまでなって、トイレに行くとお尻の骨が
当たって痛いほどであった。
しかし、締め切りは待ってはくれない。
三回とも、新聞連載や週刊誌連載を抱えての入院だった。
まだ体力がある時は、ベッドに寝そべりながら原稿をパソコン入
力し、看護婦が来るたびに画面を慌てて消したりしていたが、だん
だんと弱ってくると、頭を上げることすらムリになり、オットに電
話をして、口述筆記で入力をしてもらっていた。 二十四時間船酔
い状態なのに、エッチな気分になれるわけがない。
だが無理矢理エロ気分にアクセスした。我ながら、プロである
(拍手)。
口述筆記の時も、句読点まで気をつかい、夫に指示を投げた。
最後の一行『その時、真奈美は、高い声を上げて、果てた』を、
「そのとき、てん、まなみは、てん、たかいこえをあげて、てん、
はてた、まる。はてた、はかじつのか。以上。原稿終わり……」
そう伝え終えた瞬間、気を失ったことも、ある。
普段は私の仕事にはノータッチで、手伝いもしなければ関心もな
いオットだったが、その時ばかりはよくやってくれた。まあ、私が
稼がなければ、成り立たないような生活をしていたせいもあるだろ
う。
一人目の時は、オットは性欲の虜で、自分の射精欲を優先してい
たこともあった。
入院直前まで、私が具合が悪かろうがゲロ直後であろうが、交尾
してこようとしたこともある。しかしぎしぎし腰が打ち合わされる
たびに、こみあげてきて吐いてしまうので、すぐに挿入禁止となっ
た。
セックスレス状態になった彼はひどく不服そうだったが、私は性
欲どころじゃなかったのだから、仕方がない。
気の毒なオットは、私の原稿を入力しながら、
「えへ……ちょっと、勃起しちゃった……」
などと呟きつつ、
「“にくけい”って何だ? 食べる“肉”に植物の“茎”? ハー、
いろいろ表現も大変だねー。はい、肉茎、っと」
と、毎日毎日口述筆記を手伝ってくれた。
きっと彼は、私との電話を切った後、編集さんにメールを送信し、
こっそりオナニーでもしたことだろう。その時は、打ちこんだばか
りの私の原稿がオカズになったはずである。というか、そうじゃな
いと、官能作家として、ちょっと、虚しい。
それにしても私にとって、つわりは大敵であった。
つわりが治るためなら、もう、何でもやった。
ハリがいいと聞けばハリを打った。ぐさッとされた瞬間は痛さの
あまりゲロを忘れたが、すぐにまた吐き気は戻ってきた。
梅干しを手首に貼るといいと聞けば、梅干しを貼った。しかし梅
干しの臭いでまた吐いた。 よくわからん電気ツボ押し機三万円を
買ったこともある。しかし、痛くて熱いだけだった。SMプレイく
らいにしか使えないと思う。やらないけれど(苦笑)。
その他、お灸セット三千円、操体という体の歪みを取る施術を受
けるのに二万円……。
治ると聞けば、金は惜しまなかった。
これを食べれば治ると言われて、青汁、ごませんべい、玄米粥、
何でもやった。そしてことごとくそのまずさや匂いで吐いた。
とにかく、私にとって、最悪の百日間であった。つわりになって
百日ほど経てば呆気なく治まるのだが、その百日は、いつも、永遠
に来ないのではと思われるほど、長い。
だのに、三度目の妊娠の時に入院した東京市部の産院では、看護
婦にまで、気のせい呼ばわりされた。
「つわりなんて、気のせいなんだから。具合が悪いと思うから、具
合が悪くなるのよ」
私が御飯の匂いがダメ、何も食べられない、というのに、気のせ
い呼ばわりされ、一週間の入院中、出してきた食事ときたら、しっ
かり炊いた米の飯、たっぷり油を使った唐揚げや天ぷらなどであっ
た。もう、見ているだけでむぉッ、と吐き気がした。
担当医に「おかゆを出してください。それなら食べられるかも…
…」と頼んでも「どうしてご飯が食べられないんだ」と逆に叱られ
る始末。点滴もほんのちょっぴり水分を補う程度しかしてくれず、
私はどんどん衰弱していった。
昼食にカレーが出たその日。あまりの匂いに、出された直後にド
アの外にお盆ごと食事を返し「ここを出よう」と私は決意した。実
家近くの、よく知ってる産院に戻ろうと思ったのだ。ふらふらにな
りながら、私は退院を院長に願い出た。副院長がなぜか、入院費を
半額にしてくれた。看護婦は「どこに行ったって同じなのに」と捨
てぜりふをくれた。
今でもあの仕打ちはなんだったのだろう? とムカつくが、まあ、
無事に娘が産まれてきたので、もういいや、と思うが、いつか病院
モノ小説を書く時には、あの看護婦を、絶対にめちゃめちゃに犯し
てやるゾ、とは企んでいる(笑)。
つわり体験でも、もっとも面白かったのは、最初の妊娠の時だっ
た。当時AVのレビュー記事を書いていたので、布団に寝そべって
鑑賞していたのだが、毎度毎度、クライマックスシーンで、女優が
「イク!」と叫ぶ瞬間、「うっぷ!」と、なぜか私のゲロもこみあ
げてきてしまっていた。どうも、感極まると吐きたくなるようだ、
とわかり、つわりの神秘をまたひとつ知った気にもなった。
そして私は、エロ作家。転んでもタダでは起きない。ツワリさえ
も、原稿料に化けさせる。 つわりゲロ官能小説を発表してしまっ
たのだ。
気持ち悪いだろうけれど、ちょっとだけ紹介しておく……。
「うぁあ〜ッ!」
かをりはこれ以上ないほどに大きな口をあけて淫らに高みへと到
達し、次の瞬間に、唇から水っぽい薄黄色の液体を放出していた。
ベージュのカーペットに生臭い染みがびちゃ、と落ちた。(略)
「なんだコレ、胃液じゃないか!?」
田中が悲鳴をあげて、後ずさりした。
(『甘い吐液』(日曜研究社『日曜官能家』収録)
……これは、他の編集から「うちじゃ、あんな気持ち悪いの書か
ないでくださいね」と念を押される大問題作となったのだった(笑)
。
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私の官能と育児との激闘の日々、気に入ったら、ぜひ、応援してく
ださいね!
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