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<ラブリンク>
内藤みか
第5話
スタジオキッチンの
狭い廊下で、私と浩介
は黙ってお互いを一瞬、
見つめ合った。
「なんだか変なこと聞
いちゃったかしら、ご
めんなさい」
「いえ、いいんです」
浩介は何度かまば
たきをした。
昨日の亮太との電話
を思い出した。
「弟の携帯に電話して
たら、アイツ、イタめ
し屋でペンネなんか食
ってた。デートしてた
らしい」
「弟さん、彼女いるの」
「そりゃいるさ、Jリ
ーガーやってるんだし
女くらい、いるよ」
亮太は、弟の話をす
るとき、得意そうに少
し声が大きくなる。俺
には有名人の家族がい
るのだと自慢する。私
は何気ないふうを装っ
て浩介に揺さぶりをか
けた。
「安藤さんって、パス
タじゃなくてペンネを
好みそうに見えますね」
えッ、と浩介は驚
いて、
「なんでそんなことわ
かるんですか。すごい
なあ。本当に昨日、ペ
ンネ食べてたんですよ」
と苦笑した。
「なんとなくよ。お料
理の特集をずっと担当
していると食べ物の好
みが推測できるように
なってくるの」
本当にこの浩介と亮
太は血が繋がっている
んだ、彼らは兄弟なの
だ。亮太が昨日喋って
いたことがこんな形で
確かめられるなんて。
不思議そうな顔をし
てこちらを見ている浩
介の瞳と、再び目が合
った。
不意に、何かを思い
だしそうな、不思議な
感覚に包まれた。何だ
ろう、と自分の心の底
の記憶群に尋ねたけれ
ど、わからなかった。
でも多分、亮太の顔
立ちだろう。それなり
に似ているのだから…
…。
「明日、試合があるん
ですよ」
浩介が首を竦めなが
ら言ってきた。
「最近うちのチーム、
観客が少なくて……。
良かったら観に来て、
雑誌に紹介してくれま
せんか」
「ごめんなさい」
即座に私は断った。
「明日は予定がある
の」
「デートですか」
「うん、男の子とカラ
オケに行くの」
「男の子って言い方、
なんか、可愛いですね。
年下の彼氏ですか?」
面白そうに浩介は言
う。
「まあ、そんなとこか
な?」
「最近はほんと年の差
恋愛みたいなのが流行
ってますよね」
「そうね……」
わざと私は話題を危
険な方向に振る。
「この間出張ホストの
記事を担当したんだけ
れど、そこでも年下の
男の子がウケがいいん
ですって。主婦やOLが
ネットで好みの年下男
を選んでるの。社会の
流れなのかしらね」
「ほんとなんですか?
」
浩介は目を剥いた。
「ほんとよ。私、ホ
ストさんにも、ホスト
を指名しているお客さ
んにもインタビューし
て、聞いたもの」
私は付け加えた。
「ねえ、案外安藤さん
のお兄さんも、出張ホ
スト、していたりして。
朝まで帰ってこないと
か、言ってたじゃない?
」
(第6話に続く)
「ラブリンク」は新潮
社より1月30日に出
版予定です。
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