新潮ケータイ文庫で連載開始!


新潮ケータイ文庫DX連載




「いちばん幸せな年齢」
 〜24歳しか愛せない〜



      内藤みか



< 第1話 >




 私はアールデコ風の
ロマンティックな白い
テーブルの上で、ボー
ルペンを握り、次々と
項目にチェックを入れ
ていた。」

 結婚相談所の登録シー
トは、さまざまな希望
を申請できるようになっ
ている。

 自分が譲れない条件
を伝えておけば、効率
よく候補を絞り込み、
よりフィットする相手
に出会いやすくなるか
らだ。

 身長や体型、それか
ら学歴に年収。
 車の有無に、飲酒や
喫煙の有無。 
 それから持ち家の有
無に、同居家族、つま
り舅姑との同居の有無……
。

 10を超える条件のひ
とつひとつに、私は、
『特になし』と印をつ
けていった。

「珍しいですね、こん
なに贅沢を言わないか
たは」

 白いテーブルの向こ
う側から、穏やかな表
情の女性相談員が覗き
込んでくる。ここは結
婚相談所だけあって、
白を基調としたロマン
ティックなインテリア
で、出されたお茶のカッ
プには赤い薔薇の花が
プリントされている。

 おそらく40代であろ
う彼女は、縁なしの眼
鏡に焦げ茶色のセミロ
ングヘアが知的で柔ら
かく、頼りになりそう
だった。

「みなさん、もっと色
々条件をつけますか?」
「ええ、そりゃあもう」
 彼女は眉をひそめ、
困ったような笑顔をつ
ける。

「年収に注文をつける
かたも多いですよ。10
00万円以上の人でなく
ちゃイヤだとか」

 そんなかたはごく一
部なんですけどね、と
彼女は苦笑した。あと
持ち家やマンションを
お持ちのかたの人気も
高いんですよ、と言う。

その条件では決まるも
のも決まりませんよと
お伝えしても、絶対年
収は下げられない、な
どと頑張る女性も少な
くないのだとか。

「私はバツイチですし、
もう36歳ですし。あま
りは贅沢言えませんか
ら」
「偉いですねえ。そう
いう方にこそ良縁が来
るんだと思いますよ」

 さあ、これで最後、
と彼女は艶のあるベー
ジュを美し塗った爪で、
書類の一番下を指差し
た。

 そこには希望する相
手の年齢を記すところ
があった。
「あ、ごめんなさい。
ここだけは、譲れない
んですよ」
 私はおずおずと彼女
に打ち明けた。

「あら、いいですよ。
ひとつくらいワガママ
を言ってもらえたほう
が、私たちも探し甲斐
がありますし」
 相談員さんは、身を
乗り出して、にっこり
と微笑んだ。

 選択肢は、アバウト
に「年上」「同い年
「年下」、と3つに分
かれていた。

 私は「年下」に○を
つけた。

「いいですよねぇ、年
下のかたは、元気があ
りますもんね。最近は
年上の女性を望まれる
男性も増えてきたので、
うちでも何組かカップ
ル成立してるんですよ」

「ええ、でも……」
 特記事項を記す枠に、
私は書き込んだ。

「24歳希望」
 と……。

「24歳……ですか?」
 彼女の声が、上ずっ
た。
「ええ。そうなんです」
 私は申し訳なくなり
つつも、彼女に伝えた。


「私、24歳じゃないと、
ダメなんです」


  (第2話に続く)
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